2012年4月5日木曜日

International Child Abduction


大阪弁護士会で模擬国際家事調停が行われた。テーマは子どもの連れ去り。
Californiaで婚姻が破綻し、日本人親が他方の親に無断で5歳の男児を連れて日本に帰ってきたという設定。
Californiaから他方親が日本に来て、調停で子と将来どうやって会うかなどを話し合っていた。
離婚は紙切れ一枚の提出で簡単、子の連れ去りはむしろ母親には推奨される(調停委員が子を連れ出した母によくやった、と褒めているのを実際に見たことがある。)くらいのお国柄がよく表れている。
パネルの長田先生(大阪大学)は、ハーグ条約では原則連れ去り(abduction)から1年以内でないと子の返還請求はできないし、返還を求められた裁判所は原則6週間以内に返還を認めるか否かの判断をしないといけないので、こんなのんびりした話し合いをすることはないだろうとのコメント。

アメリカ国内から外国へ、一方の親が他方の親の同意なく子どもを連れ出すのは連邦法上の犯罪である。
ここでは、親によって連れ去られた子はしばしば、いきなり、親族、友人、クラスメートを失うことになり、深刻な精神的及び身体的問題さらされる危険がある、とされている。
また子を連れ去られた親には、裏切られたこと、喪失感、怒り、抑うつなどの精神面でのダメージがあることも指摘されている。

なお、上記Department of Stateのページではkidnapという言葉が使われているが、大阪弁護士会の模擬調停では連れ去られた親がkidnap という言葉を使ったことに対し、表現がきつすぎる、通訳は直訳をせず、和らげるように、とのコメントがあった。日本においては犯罪であるとは全く認識されていない。模擬調停では、連れ去られた親が連れ去った親から、アメリカで誘拐として提訴されているからアメリカに行けない(この部分は聞いていて意味がわからなかった。警察に届出がなされているの意味か?)、と言われ、届出は取り下げることができる、必要ならそうしてもいいから子と会わせてほしいと言っていた。

連れ去りの予防方法としては子のパスポートの作成に同意しない、alarm systemに登録をしておく、ということのようだが、パスポートが既に出されていたら出国を止めるのは困難である。また、日本人の親の子は日本人だから、日本の領事館が子のパスポートを出してしまえばアメリカのパスポート発給を止めても意味がないかもしれない(日本領事館にも発給をしないよう求めることはできるが、証明書等の書面が要求されているので時間がかかりそうである)。

緊急時の連絡先も記載されているので、出国を止めるための努力もなされているようだ。

諸外国の状況の項目で日本をクリックすると、子を連れ去られた場合、解決がもっとも困難な国である、この国では子の連れ去りは犯罪ではない、と記載されている。

子どもは親の付属物で、子は母系で育てる、というのが日本の伝統だとしたら、これは文化レベルの問題かもしれない。
もし、日本人が子を連れて帰ることは多いが、外国人が日本から子を連れ去ることは少ないのだとしたら、日本人保護のためにハーグ条約に加盟せず、誘拐ではなく母が子を連れて帰っているだけでこれは美しい行為だと国際的に主張することも考えられるはずだが。むしろ国内では母による子の連れ去りを推奨しつつ国際的には条約加盟というのはどうなのだろう?

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